手のなかの虹:田辺聖子著のレビューです。
感想:田辺さんの日常を愉しませているもの
この本はなんだろうなぁ・・・・読み終わったという感覚が全然ない。サブタイトル「私の身辺愛玩」ということで、田辺さんが大切に大切にされているものたちを掲載した本で、カラー写真とともに、その「物」たちとの出合いや思い出話がまとめられている。
ということで、もちろん読み物なんですけど、私、終始興奮しちゃったり、ボーっとしちゃったりで、活字を追っている感覚が全くなかったという。読み終わってからも、開いては閉じ、閉じては開いてニマニマしていた。
驚くべきことは、コレクションの数々のジャンルが母と私が集めていたものとかなり重なっていた。だから、「あれ~これ、どっかで見たぞ!」と、歓喜しっぱなし。
ビーズや刺繍のバッグから盃のような小さい陶器、ヴィクトリアン・ステッカーに至るまで同じものではないけれど、その集めているジャンルがもうなんというか(笑)はぁ~お邪魔したいわ~田辺さんのお家。
「物語」をもつ物たち
さてさて作家さんは家のなかで仕事をする時間が長いだけに、部屋のなかの環境がいかに仕事に影響するかが窺える。
少しのひまをみつけては糊と鋏、あるいはペンキで塗りたてて箱をつくりあげ、身近においていつくしむ。原稿を書かずに一日、箱づくり、シールの整理をしているときもある。─────私、シール大好き少女なのです。
あはは、田辺さんのお茶目さには敵わない!原稿も書かずに・・・って!
でもでも、私、この本を読んで、小説や物語を描くにあたって、こういう好きなこと、好きな物に没頭する時間や環境が、どれだけ作家の想像力を育て、そして実になっていくのか・・・ということを、この本を通して見たような気がしています。好きなものを愛でて、好きなものに囲まれて。
それにね、田辺さんの周りにあるものは、「物」ではあるけど、ちゃんとひとつひとつストーリーがあった。まさに物を語るという「物語」が。
本当はこの本、お正月に古本屋さんで見かけたのだ。買わなかったことがとても悔やまれる!なにがなんでも、また見つけて手元に置きたい宝本です。