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【レビュー】月夜のチャトラパトラ:新藤悦子

 

 

 月夜のチャトラパトラ:新藤悦子著のレビューです。

月夜のチャトラパトラ (文学の扉)

月夜のチャトラパトラ (文学の扉)

  • 作者:新藤 悦子
  • 発売日: 2009/11/11
  • メディア: 単行本
 

 

チャトラパトラってなんだろう?

 

異国情緒、おいしい食べ物、人々との交流、
不思議な空間、小さい人々。

この物語、読者の心をときめかす要素が
とてもバランス良く描かれている。

舞台はトルコのカッパドキアの洞窟ホテル。
世界中の人々を魅了しているきのこがニョキニョキ
突き出して来たような岩の不思議な光景には、
まさにこんな物語が生まれてもおかしくない。

観光シーズンが過ぎ、閑散としたこのホテルに、
日本人の画家のヨーコとフィンランド人のミッコがやって来る。
ヨーコは風景を描きに、ミッコは考古学者で、何かを探しに来たようだ。

迎えるはこのホテルのオーナー夫婦アタとアナ。
その子供のカヤ・12歳。

カヤは赤ん坊の時に洞窟の中で発見された少年で
この夫婦に育てられている。

登場人物は決して多くはないのだけれど、
「手芸おしゃべり占い大会」など、女性たちが集まって
おしゃべりするシーンなどもあり、賑やかで楽しい。

そしてなんといってもチャトラパトラの存在だ。
かれらはカッパドキアの洞窟に住んでいる小さい人。

満月の夜、陽気な歌声で歌を歌いながら
「ペグメズ」を順番にかき混ぜるチャトラパトラ。

「なんだろう?この小人たちは・・・」と、
はじめは不審な目で見ていた私。
しかし、読み進めると彼らが登場するだけで
自然に顔がほころんでしまう。

カヤはこの小さい3人組の小人に小さいときに出会っている。
仲良くなりたくて干ぶどうをさしだしたら、彼らは喜び、
そして、3人が作っていた「ペグメズ」をカヤにふるまう。

「ペグメズ」はぶどう汁を煮詰めたもので、
あったかくて、とろっとしていて、甘く、おいしい、ほっとして、
思わずほほがゆるむシロップのようなもの。

彼らが作ったこれを飲むと、チャトラパトラ何を話しているのか
自然に理解できてしまうという。

そこの国の言語が解らないけど何を言っているか
解ってしまったってことがみなさんにも経験があると思うけど、
そんな感じで自然に言葉を交わしている風景が不思議で面白い。

さて、チャトラパトラは子供であるカヤが知っているだけの存在かと
思いきや、どうもそうではなさそうだ・・・ということが、
ヨーコやミッコの登場で判って来る。

一体、この陽気で心が和んじゃうチャトラパトラとはなんだろう?

 

冬におこもりするなら こんな場所がいいな~

 

私はこの物語に流れている静かな時間、季節、雰囲気がとても好きだ。
それはもう最初のページからずっと続いていた。

冬のカッパドキアはとても寒そうだけど、
長期滞在で「おこもり」するのにはこんなホテルがまさに理想的。

カイセリマントゥお腹一杯食べて、トルココーヒーで占いして、
ホテルの図書館で不思議な本を読んだり、こびとに会ったり。
ヨーコさんみたいに絵が描けたらもっともっと楽しめる。

理想的な「冬の休日」を目の前にぶら下げられ、
指をくわえながら読み終えた。

そして、キョフテ、マントゥ、キョフテ、マントゥ・・・・・
と呪文のように唱えながら、お腹をすかしている。
ふぅ。近日中に食べに行くか・・・w