つくも神:伊藤遊著のレビューです。
魂の宿った物たちのお茶目な話
エレベーターの開く瞬間って、ちょっと緊張しませんか?
ある日、エレベーターに乗ろうとした「ほのか」は、ちょっと怖い顔をした置物があることに気づく。なんかこれだけでもう十分な気がしますが、この日を境に、ほのかと兄は不思議な体験を繰り返します。
ほのか達の住むマンションのとなりに古い家があり、おばあさんが住んでいます。そこの敷地内には「土蔵」があり、ちょこちょこ登場する「もの」はどうもそこから現れているようだ。不審に思ったほのかは、おばあさんと話す機会を作り、その謎に迫ります。
やがて、それらは「つくも神」と言って、昔、おじいさんが大切にしていたものたちで、それらには魂が宿っています。
さて、つくも神たちは、きままに散歩しているかのように、ひょっこり現れるようになります。ふろしき・キセル・根付・臼など、どのキャラクターも個性的です。中には捨ててあった壊れた傘を修理して戻しておくなど、お茶目な感じが気分をほっこりさせてくれます。
物に対する見方が変わるかも?
お兄ちゃんが不良化して、煙草を吸ったり、仲間に呼び出されたりと思春期特有の尖った雰囲気も、この「つくも神」たちの登場でふんわりした仕上がりになっています。面白かったけど、若干話が長かったかなぁ…とも思う。でも、後半、同じマンションに住む嫌みな井上さんが事件を起こすのだが、ユーモラス満載といった感じで締めくくられ、スカッと気分爽快♪
ものに魂が宿って、それが動き出したら怖いと思うけど、こんなお茶目な神様なら、ちょっと近くに居て欲しいかも(笑)壊れた傘を捨てようと思った時、「もう一度考えてみて」。そんなひと言が聞こえて来るようになる。この小説を読むとね。