サクラ秘密基地:朱川湊人著のレビューです。
感想 ある一時を切りぬいたような世界と秘密基地
子供だけが知っている特別な場所。大人には邪魔されないそんな場所のひとつやふたつ、昔の子供なら持っていたと思います。
今は空き地なんかあっても、きっちり管理されていたりで、自由に出入りできる秘密の場所もなかなか作りにくくなったものだなぁーと、この本を読んであらためて思いました。
「よし、俺たちだけの秘密基地にしようぜ」
空き地の隅には置き去りになっている一台の軽トラックがある。もうボディーはあちち錆びていて、タイヤもすべてパンクしている。恐らく不法投棄と見られるそのトラックは、中は意外にも汚れていない。ここなら、雨風もしのげる。
みんなで考えて付けたその名は「サクラ基地」。
メンバーは小学生男子4人。兄弟を含むこの子供たちはなんらかの複雑な事情を
抱えている家庭で育ち、それゆえこの場所は子供たちだけの日常から少しだけ解放される場所となる。
最初は子供時代の「秘密の基地」を懐かしく思い出し、ワクワクした感覚でいたのですが、話の状況はどんどんシリアスに展開され、ラストはなんとも哀しい結末であります。
哀しさもどこか懐かしむような気持ちに
しかし、これは主人公の回想による話なので、哀しくはあるのですが、ある一時期を切りぬいたような、懐かしい思い出話なんだという側面もあり、読後感は決して悪くない。
装丁画はこの4人の男子の特徴がよく描かれていて、読書後に眺めると必ず胸がキュ―――となります。まるで読者も彼らと過ごした一時を思い出したかのようなそんな感覚にも…。
本書は全部で6つの話で綴られ、全体的には写真と家族にまつわる内容。哀しかったり、不思議だったり、切なかったり、ほんわかしたり。いつものことですが、感情をふりまわされながら、ズンズン読み進められます。
朱川さんの持ち味が出た一冊になっていると思います。
特に表題作はいつまでも心に残るようなそんな切ないお話でした。





