風味さんじゅうまる:まはら三桃著のレビューです。
☞読書ポイント
ホームドラマのようなやわらかい小説
なかなか後味が良かった作品です。
ちょっと読後がきびしかった本を読んでしまったときのお口直しにちょうどいい(笑)
大正10年創業の菓匠「一斗餡」は九州の福岡は飯塚にある。老舗の自慢は餡子をたくさん使用した甘い和菓子。かつて炭鉱労働者にこの店の和菓子はたいへん喜ばれていたそうだ。
家族構成は、祖母のカンミと両親、そしてイケメンでチャラ男の兄・北斗。妹の風味は中学生。 北斗は長崎の老舗カステラ店で修業中。昔ながらの商店街は、一家の話し声が隣近所に筒抜けだけど、ご近所付き合いも盛んで、なかなか心温まるシーンが多い。
そんなのんびりした和菓子屋のもとへ、新製品の菓子で競い合う「SGRS(シュガーロード・スイーツ)グランプリ」、のお誘いの声がかかる。(・・・というか、シュガーロードって本当にあるんですね。なんて甘い名前なんでしょ)
はじめは乗り気でなかった父も、修行先から脱走してきた兄と一緒に新しいお菓子作りに四苦八苦しながらチャレンジする。
本作はずっぽりお菓子作りの話ではなく、どちらかと言えば家族の話を中心にお菓子が絡んでくるといった内容で、ひとりひとりの人物の特徴を活かした話が多い。特に風味の学校生活での人間模様や、兄に対するちょっとした嫉妬など、明るいムードの流れの中に、すこしだけ尖った部分が見え隠れする場面も読み応えがある。
さて、グランプリの行方は・・・。
そして、どんなお菓子が出来上がったのか。
餡子をたっぷり使った美味しいお菓子、期待しましょう!
全体的に人との交流が温かく、初めて読んだ作家さんなのにとても安心感があった。
でもって、最後までやたら気になる「シュガーロード」。
これ、全部制覇したら、どんだけ丸くなるだろうか?ぷっぷ。