わたしたちの帽子:高楼方子著のレビューです。
知らない建物のなかは好奇心を掻き立てられる
高楼方子さんの物語はちょっと古い建物の中で起こる
不思議なことが特長的だ。
その謎解きが、どの作品も非常に楽しい時間を
提供してくれています。
春休み中に家の改装をすることになったサキは、
古い建物でしばらく生活することになった。
建物のなかはちょっと入り組んでいて、階段や廊下が
妙な具合につながっている。
そこでサキは不思議な女の子・育ちゃんに出会う。
彼女もここの住人らしいが、実態は解らず、
存在自体なんとなくフワフワしているのだ。
育ちゃんは丸いスカートを履き、色々な布が縫い合わされた帽子を
かぶっている。その帽子はなんと、部屋に置いてあったたんすの
中からサキが見つけた帽子と同じ。
ふたりはこのビルを冒険するときにはいつもこの帽子をかぶって
出かけるのです。
過去と現在が交差するとき
この冒険で遭遇するモグラのおじさん(山本晋也監督似)とか、
猫の事務所とか、ビル内は不思議感がいっぱいなのですが、
なんといってもこのビルのことを知りつくしている育ちゃんも
不思議な存在として、読者を引き付けていきます。
育ちゃんと一緒にいる時に感じる何か・・・・。
懐かしいような・・・そんな気持ちになるのはなぜだろう。
それは過去と現在が交差したとき、魔法がとけたように
マイルドな世界が広がります。
お母さんが留守中に、ちょっと出かけちゃえ!
おとなには告げないで過ごす私と友達だけの秘密の時間。
そんなわくわくした気持ちと、ちょっとした後ろめたさ。
こういう時間が一番楽しかったりするんだなぁ~。
ぱたぽんぱたぽん わたしのぼうし
ぱたぽんぱたぽん あなたのぼうし
おはながさいてる はっぱがゆれる
わたしたちのぼうし ぱたぽんぽん
あ、ドアの向こうから聞こえるあの歌。
ふたりの女の子がうたう歌は、今も昔も一緒だな。