あのころのデパート:長野まゆみ著のレビューです。
「物産展」のチラシを見るわくわくに似ている
いわゆる老舗系のデパートは、最近めっきり行かなくなった。それでもこんなタイトルの本を見つけると心踊る感覚が蘇るのはデパート=楽しい所というイメージがずっと続いているからなんだろう。
足は運ばなくなったけど、今でもデパートのチラシを見るのは好きだし、「物産展」などのチラシはそれこそ隅から隅までチェックしてしまう。
本書は著者の長野さんが元デパート勤務ということだけあって、内容の充実度はかなりのもの。さらに長野さんのお母様も元デパート勤務なんですって!ということでお母様の話も含め、かなり時代を遡ってのデパートを見ることができた。話題が豊富でデパートの話だけにとどまらず、関連事項が引っ張り出され、それと同時に現在と昔を行ったり来たり。
取り上げている内容は細かいです。
セロテープとホルマリン…なんて、一見なんの結びつきもなさそうですが、昔はセロテープは高級品。ヤマト糊も割高。毎朝、店員がうどん粉を練っていたそう。しかし、時間が経つとカビるのでホルマリンを入れていた。…うわぁ、知らなかった、経費節減も気合いの入り方が違う。
包装紙ひとつ留めるものにも、すごく歴史を感じます。屋上遊園地とか、大食堂とかのノスタルジックな話だけではなく合間合間にビックリするような情報が埋め込まれていました。
カーペットやカーテンという商品ひとつからも、自分たちの現在の生活がいかに変化していったか?おもしろいくらい実感できます。店員さんたちの裏事情的な話も面白かったなぁ。
リニューアルを繰り返ししている現在のデパート。昔のアナログ感漂う昔のデパート。
どちらも行ったことある人たちにとっては、思わず目を細めてしまうような1冊であると思います。