怪談:小池真理子著のレビューです。
感想・あらすじ 小池真理子氏の「幻想怪奇小説」とは?
7編、どれもヒタヒタと静かに近づいてくる怖さがある。
会社の同僚たちとお店貸し切りで送別会。
幹事の私は帰り際に忘れ物の黒いカーディガンを店主から渡されたはいいが、そのカーディガンは誰のものでもないと判りそして・・・・─────「カーディガン」
地方の名家に嫁いだ友人宅を訪れ20畳もあろうかと思われる座敷で一晩を過ごすことになるのだが・・・。久しぶりに会った友人は亡き夫の弟と再婚をし、この家に住み続けている。前夫にお線香をあげたいと申し出るが、友人は良い顔をしない。仏間の話など昼に聞き、その晩広い座敷で過ごす主人公の見たものは・・・・・─────「座敷」
ただ漫然と、死者と生者がつながっているだけで、なぜつながっているのかも明らかにされていない。恐怖に明確な因果関係を求めたがる読者は、「なぜ」の説明を必要とする。だが、作者自身が、その「なぜ」に答えられず、答えられないことこそ、書きたいと願うのだから、どうしょうもない。
小池さんの「幻想怪奇小説」とは、こういうことらしい。
私は小池真理子さんの怖い小説が好きなのですが、なぜ好きなのか…言葉にすることが出来なかった。この「あとがき」を読んで、あーそういうことか・・・と頷く。
「なぜ?」この部分を残す小説は元来モヤモヤしちゃって好ましくないのだけど、
怖い話に限っては「はっきりした原因」が解ってしまうと、とたんに冷めてしまうこともある。
そういう意味でも、小池さんの怖い話はいい具合の「どんより感」を残してくれるので個人的には好きなのですが、結末をはっきりさせたいって方には向かないかもしれません。
どこかで起こり得る・・・そんなひんやり感が
どの話も過剰な設定ではなく、私たちの日常と変わりがない。なのでイメージも持ちやすい。しかし、いつしかこの世とあの世が交わっているところに運び込まれる。
「あれれ、ここは一体どこなんだろう?」……なんというか、手品みたいなのです。
私自身か、あるいは私のまわりの近しい人が
実際に経験した出来事をちりばめてみた
という短編集は、強烈に怖くはない。けど、ふとした瞬間に自分も経験しちゃうかも? やっぱりひんやりしてしまう。