うずまきぐ~るぐる 

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【レビュー】座布団:剛しいら

 

男同士の恋愛を描いた小説ではあるけれど・・・

 

なかなか手にしないジャンルではあったわけですが、とにかく読んで大正解でした。読み進めるごとに、どんどん登場する人々の魅力にはまってしまい、それはとどまることを知らず、最後まで私を惹きつけて離しませんでした。

 

主人公は森野要こと、落語家山九亭感謝。
普通のサラリーマンだった彼は仕事をさぼりたくなって、営業の外回り中、ふらりと入った寄席がきっかけで、その後の人生ががらりと変わってしまう。

 

高座に上がった山九亭初助というちょっといい男に魅せられ、その後、寄席に通い、やがて弟子入りをする。なにも知識がなかった要は初助の指導のもと成長してゆきます。

 

この話は師匠の初助が亡くなったことを機に、要が初助とのこれまでの出来事を回想し、現在と20年前を行き来しながら語られます。すっと昔の場面に切り替わる感じもなかなか。

 

「座布団」では入門した要が住み込みで手伝いをしながら前座を受け持ったり、また、兄弟子の寒也と親密な関係に落ちていく様子が中心です。

 

 

 

後半で明かされる感動的な事実

 

「花扇」は前半では明かされなかった、初助の謎が次々に明かされてゆきます。
何の未練もなく男を使い捨てる初助。しかし、その裏には意外な事実がありました。

 

私はこの初助の過去の話が何よりも好きです。
いや、過去だけでなく、初助の人生そのものに惹かれているのかもしれません。

 

人生を全て芸に尽くした男の生き様が実に見事に描かれ、特に様々な事実が明かされていく過程は、初助の今までの言動と繋がってゆき、お腹の中でくすぶっていたものが、ジワジワと湧き上がってくるものがありました。それは哀しいくらい切ないものだったりするのですが。

 

ということで、サラッと書きましたが、要と寒也という男同士の恋愛。
そしてまた、師匠の初助が生涯かけて愛した相手も男性ということでBLというくくりになる小説とも言えます。

 

なので、しばしそういう絡みのシーンもあり、苦手な方もいらっしゃるとは思いますが、ごく個人的な感想としては、男女の恋愛シーンとさほど変わらず意識せず読めた気がします。

 

BLというと、なんだかすごいことを想像しちゃいがちだけど、本書はもっと深い部分での繋がりや、人情味を感じさせられることが多く、本気で人を愛することにともなう、切なさとか、孤独とか、待つこととか、そして、何と言っても好きな人と一緒にいる

喜びなど、奥深いものがこの小説にはたくさん詰まっているのです。

 

男同士の恋愛・・・っていうことをさほど気にせず読めたのもそんな部分が大きかったからかもしれません。そうそう、忘れてはならない、落語の世界。
舞台裏も含め、この話を通して見ることができました。

 

筆者は

キャラクターというものは、皆様に読まれて初めて命を貰います

と言っています。

 

うんうん、この魅力的な人たちは、確かに私の中で動き始めました。
浅草の町を歩けば、どこかで出会えそうな気すらしています。

 

今、風鈴の音なんて聞いたらホロリときちゃう。
そんなちょっぴりほろ苦い気持ちを抱きながら本を閉じるのでありました。

─────人生いろいろ。涙あり、喧嘩あり、笑いあり、出会いあり。